講演者:脇舎 和平(Wakiya Kazuhei) 横浜国立大学 多重極限物性研究室 助教
講演題目:「カゴ状Pr化合物における構造不安定性と非クラマース二重項基底状態」
講演要旨:4f 2配位のPrイオンが立方対称の結晶電場を受けたとき、非クラマースG3二重項が結晶場基底状態となることがある。この非クラマース二重項は、磁気モーメントをもたず、多極子自由度のみをもつため、低温で多極子に起因した物性の発現が期待される。実際に、G3二重項基底状態をもつPrT2X20 (T: 遷移金属, X = Zn, Al)では、多極子秩序、圧力誘起重い電子超伝導や四極子近藤効果など興味深い物性が報告されている。一方、非クラマース二重項基底状態が実現する化合物はPrT2X20を除くと4つのみと少数であり、上記物性の全容解明に向け、新たな立方晶Pr化合物の探索が強く求められていた。 最近、我々はPrT2X20の中で構造相転移を示すPrRu2Zn20に着目し、構造不安定性の原因が16cサイトに位置するZn原子の低エネルギー振動であることを明らかにした。さらにこの16cサイトのZnを選択的に他元素で置換することで、新たな非クラマース二重項系PrRu2X2Zn18 (X = In, Sn)の合成に成功した。本講演では、構造不安定性に着目した新物質開発の詳細やPrRu2Sn2Zn18において観測された非クラマース二重項の自由度による相転移などについて紹介する。